協会報第121号
巻頭言
新型コロナウイルス感染症の問題が生じてから2年半以上が経過しました。当初の期待を裏切り感染は拡大、長期化しています。ウイルスは短期間で変異を繰り返しており、未だに終息の目途が立ちません。当初、未知なるウイルスに対する危機感から感染拡大防止のため政府主導の厳しい行動制限が行われ、一時的に新規感染者数は減少しましたが、また直ぐに次の流行の波が押し寄せ、その波は徐々に大きくなっていく傾向にあります。令和4年8月上旬の時点で第7波終息の兆しは見えず、日本の新規感染者数は過去最大の1日20万人以上に及びますが、重症者数、死者数が多くないことを理由に政府は行動制限を実施しておりません。
あらゆる制限が緩和され、感染は長期化していることから、まさに感染拡大中であっても一般では「コロナはもうだいぶ落ち着いた」と感じている方も多くいらっしゃるかもしれません。しかし医療従事者の中でも感染は拡大しており、人手不足から診療を制限しなければならない事態が生じています。新型コロナウイルス感染症に業務上罹患したことが認められる場合、労災保険給付の対象になります。新型コロナウイルス感染症の労災適用については、すでに厚生労働省から発出されている「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」に基づき実施されています。
すでに日本国内で1,500万人以上の感染が確認され、罹患者の中には、コロナ罹患後症状に長期間苦しむ方もいらっしゃいます。こうした状況を受け、厚生労働省は2022年5月12日付で、都道府県労働局宛に新型コロナウイルス感染症に係る罹患後症状の労災補償における取扱いに関わる新たな通達を発出しています。感染性消失後にも罹患後症状が残り、業務に支障がある場合は療養補償給付、休業補償給付の対象と成り得ますので、慎重な対応をお願いいたします。
副会長 伊藤之一